2級ボイラー技士 2024年(R6)4月-問3 過去問の解説 【ボイラーの構造に関する知識】

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問題

鋳鉄製蒸気ボイラーについて、適切でないものは次のうちどれか。

1.暖房用ボイラーでは、原則として復水を循環使用する。
2.暖房用ボイラーの返り管の取付けには、ハートフォード式連結法が用いられる。
3.暖房用ボイラーの給水管は、ポンプ循環方式の場合にはボイラーに直接取り付ける。
4.セクションの数は20枚程度で、伝熱面積は50m2程度までが一般的である。
5.多数のスタッドを取り付けたセクションによって、伝熱面積を増加させることができる。

回答

正解は(3)

問題の解説の前に鋳鉄製ボイラーの説明をします。

鋳鉄製ボイラーは、鋳鉄製のセクションをニップル(結合用の部品)で連結して組み立てるボイラーです。主に暖房用蒸気ボイラーや温水ボイラーとして使われています。

鋳鉄製ボイラー
出典:モノタロウ

鋳鉄製ボイラーには以下のような特徴があります。

  • セクションの数を調整することで、伝熱面積を増減させることができる。
  • 上記の構造により、分解した状態で運搬や搬入が可能なため、据付が容易である。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて強度が低いため、高圧では使用できず、低圧用途に向く。
  • 蒸気ボイラーで圧力0.1MPa以下、温水ボイラーで圧力0.5MPa以下かつ温度120度以下
  • 異なるセクション同士で熱の伝わりに変化が起きる事があるため、急激な加熱を行うとそれぞれのセクションで不動膨張が発生して割れが生じる場合がある。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて耐食性に優れており、腐食しにくい。

1.暖房用ボイラーでは、原則として復水を循環使用する。
→正しい
暖房用ボイラーでは、原則として水をボイラー内で循環させて使用します。
その理由は、水が蒸気となって暖房のために熱を放出した後も、まだ熱を十分に蓄えているためです。この熱をそのまま捨ててしまうのはもったいないので、復水(蒸気が冷えて凝縮したもの)をボイラーに戻して再利用するのが一般的です。
また、復水は不純物が少ないため、ボイラー内部の腐食やスケール(水垢)の付着を防ぐこともできます。

2.暖房用ボイラーの返り管の取付けには、ハートフォード式連結法が用いられる。
→正しい
暖房用蒸気ボイラーの復水返り管で漏洩が起きると、ボイラー内の水位が低下する事故が発生します。
そこで、下図のように返り管をボイラーの安全低水面よりも上に立ち上げてから接続する方法があります。こうすることで、返り管で漏洩が起きても、水位が安全低水面を下回ることはありません。
この接続方法をハートフォード式連結法といいます。

ハートフォード式連法

3.暖房用ボイラーの給水管は、ポンプ循環方式の場合にはボイラーに直接取り付ける。
→不適当
暖房用鋳鉄製蒸気ボイラーでは、原則として水をボイラー内で循環させて使用します。しかし、ブローなどでボイラー内の水量は減少するため、給水が必要になります。
給水される水は温度が低いため、高温のボイラー本体に直接注ぐと、各セクションで不均一な膨張(不動膨張)が発生し、ひび割れの原因となります。
そのため、暖房用ボイラーの給水管は「ボイラーに直接」ではなく、ボイラー水が戻ってくる返り管に取り付けて、戻ってきた水(復水)と混合させて温めて給水するのが一般的です。

4.セクションの数は20枚程度で、伝熱面積は50m²程度までが一般的である。
→正しい
鋳鉄製ボイラーのセクションは5~20枚程度、伝熱面積は50㎡程度が一般的です。
以下の写真のようにセクションを増やすことで伝熱面積を増やすことが出来ます。

1枚のセクション
出典:前田鉄工所
複数のセクションをつなげる
出典:前田鉄工所

5.多数のスタッドを取り付けたセクションによって、伝熱面積を増加させることができる。
→正しい
鋳鉄製ボイラーのセクションには、燃焼ガスから熱を効率よく吸収するために、多数のスタッド(突起)が設けられています。
これにより、伝熱面積を増やし、ボイラーの熱効率を高めることができます。

スタッド
出典:アジア技研
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