2級ボイラー技士 2024年(R6)10月-問1 過去問の解説 【ボイラーの構造に関する知識】

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問題

熱及び蒸気について、適切でないものは次のうちどれか。

1.過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度という。
2.乾き飽和蒸気は、乾き度が1の飽和蒸気である。
3.飽和蒸気の比エンタルピは、飽和水の比エンタルピに蒸発熱の比エンタルピを加えた値である。
4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど小さくなる。
5.飽和水の蒸発熱は、圧力が高くなるほど大きくなり、臨界圧力に達すると最大になる。

回答

正解は(5)

1.過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度という。
→正しい
沸騰した後にさらに熱を加えて蒸気の温度を上げると、過熱蒸気になります。過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度と呼びます。(過熱度は以下の図を参照)

ヘタ・レイ

例えば、標準大気圧の状態では水は 100℃ で沸騰し(飽和温度)、この蒸気をさらに加熱して温度が 120℃になったとします。
このとき、過熱度は以下の計算で求められます。
過熱度=120℃(過熱蒸気の温度)−100℃(飽和温度)=20℃
圧力が変われば飽和温度も変わるという点に注意しておいてください。

2.乾き飽和蒸気は、乾き度が1の飽和蒸気である。
→正しい
乾き度は、湿り蒸気中に含まれる乾き蒸気の割合を示す指標です。これは 0 から 1 の範囲で表現され、値が 1 に近づくほど蒸気の中に含まれる水分が少なくなります。
乾き飽和蒸気は水滴(水分)を全く含まず、全てが蒸気になっている状態を指すため、乾き度は 1(100%)となります。

ヘタ・レイ

乾き飽和蒸気の定義はしっかり覚えておきましょう。
「乾き飽和蒸気は、乾き度が0の飽和蒸気である。」は×ですからね!

3.飽和蒸気の比エンタルピは、飽和水の比エンタルピに蒸発熱の比エンタルピを加えた値である。
→正しい
比エンタルピーとは、物質の単位質量あたりのエンタルピー(熱量)のことです。
飽和蒸気の場合、水を飽和温度まで温めるのに必要な熱量(顕熱)と、その飽和水を全て蒸発させるのに必要な熱量(潜熱)を合計した値となります。
下の図は標準大気圧での水の状態変化です。温度0から100℃まで上げるのに必要な比エンタルピ(顕熱)は419〔kJ/kg〕で、そこから飽和蒸気にするために必要な比エンタルピ(潜熱)は2,257〔kJ/kg〕となります。
これらを合計したものが飽和蒸気がもつ全熱量となります。

4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど小さくなる。
→正しい
飽和蒸気の比体積(1 kgあたりの体積)は、圧力が高くなるほど小さくなります
理由は簡単で、圧力が高くなると蒸気の分子がぎゅっと押し合うようになり、蒸気自体が密になって体積が小さくなるからです。
圧力が上がると蒸気は密になり(分子が詰まる)、体積が小さくなるためです。

イメージとしては、1 kg の蒸気を小さな粒の集まりだと考えてください。

  • 圧力が低いと粒は広がって自由に動ける → 蒸気の体積は大きい
  • 圧力が高くなると粒同士が押し合いながら詰まる → 蒸気の体積は小さい

5.飽和水の蒸発熱は、圧力が高くなるほど大きくなり、臨界圧力に達すると最大になる。
→不適当
飽和水の蒸発熱(潜熱)は、圧力が高くなるにつれて小さくなります。
これは、圧力が高くなると液体と蒸気の状態の違いが小さくなるためです。やがて、臨界圧力に達すると、液体と蒸気の区別がなくなり、状態変化に必要な蒸発熱(潜熱)ゼロになります。

以下のように圧力が上昇すると潜熱は減少していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)

圧力(MPa)沸騰温度(℃)蒸発潜熱(kJ/kg)
0.1(大気圧)100約2,257
22.06(臨界圧力)約3740

臨界圧力とは、物質の臨界温度において気体と液体が区別できなくなる「臨界点」での圧力のことです。

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