2級ボイラー技士 2023年(R5)10月-問3 過去問の解説【ボイラーの構造に関する知識】

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問題

鋳鉄製ボイラーについて、適切でないものは次のうちどれか。

1.温水ボイラーの温水温度は、120℃以下に限られる。
2.重力循環方式の蒸気ボイラーでは、給水管はボイラー本体の安全低水面の位置に直接取り付ける。
3.ポンプ循環方式の蒸気ボイラーの場合、返り管は安全低水面以下 150mm 以内の高さに取り付ける。
4.ウェットボトム式は、ボイラー底部に耐火材を必要としない構造となっている。
5.鋼製ボイラーに比べ、熱による不同膨張によって割れが生じやすい。

回答

正解は(2)

問題の解説の前に鋳鉄製ボイラーの説明をします。

鋳鉄製ボイラーは、鋳鉄製のセクションをニップル(結合用の部品)で連結して組み立てるボイラーです。主に暖房用蒸気ボイラーや温水ボイラーとして使われています。

鋳鉄製ボイラー
出典:モノタロウ

鋳鉄製ボイラーには以下のような特徴があります。

  • セクションの数を調整することで、伝熱面積を増減させることができる。
  • 上記の構造により、分解した状態で運搬や搬入が可能なため、据付が容易である。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて強度が低いため、高圧では使用できず、低圧用途に向く。
  • 蒸気ボイラーで圧力0.1MPa以下、温水ボイラーで圧力0.5MPa以下かつ温度120℃以下
  • 異なるセクション同士で熱の伝わりに変化が起きる事があるため、急激な加熱を行うとそれぞれのセクションで不動膨張が発生して割れが生じる場合がある。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて耐食性に優れており、腐食しにくい。

1. 温水ボイラーの温水温度は、120℃以下に限られる。
→ 正しい
鋳鉄製ボイラーは高温・高圧に弱いため、温水ボイラーの温度は120℃以下に制限されています。

2. 重力循環方式の蒸気ボイラーでは、給水管はボイラー本体の安全低水面の位置に直接取り付ける。
→不適当
暖房用鋳鉄製蒸気ボイラーでは、原則として水をボイラー内で循環させて使用します。しかし、ブローなどでボイラー内の水量は減少するため、給水が必要になります。
給水される水は温度が低いため、高温のボイラー本体に直接注ぐと、各セクションで不均一な膨張(不動膨張)が発生し、ひび割れの原因となります。
そのため、給水管は「安全低水面の位置に直接」ではなく、ボイラー水が戻ってくる返り管に取り付けて、戻ってきた水(復水)と混合させて温めて給水するのが一般的です。

ハートフォード式連法

3. ポンプ循環方式の蒸気ボイラーの場合、返り管は安全低水面以下 150mm 以内の高さに取り付ける。
→ 正しい
ポンプ循環方式では、返り管からボイラの水が逆流して水位が異常に低下することがないように、返り管を安全低水面以下、150mm以内の高さに取り付けます。

4. ウェットボトム式は、ボイラー底部に耐火材を必要としない構造となっている。
→ 正しい
ウェットボトム式は、下図のようにボイラー底部にも水が循環します。この構造により伝熱面積が大きくなり、さらに底部が水で冷却されるため耐火材が不要となります。

鋳鉄製ボイラー
出典:モノタロウ

5. 鋼製ボイラーに比べ、熱による不同膨張によって割れが生じやすい。
→ 正しい
鋳鉄製ボイラーは、異なるセクション同士で熱の伝わりに変化が起きる事があるため、急激な加熱を行うとそれぞれのセクションで不動膨張が発生して割れが生じる場合がある。

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