2級ボイラー技士 2023年(R5)10月-問2 過去問の解説【ボイラーの構造に関する知識】 

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問題

水管ボイラーについて、適切でないものは次のうちどれか。

1.水管ボイラーは、ボイラー水の流動方式によって自然循環式、強制循環式及び貫流式に分類される。
2.強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせる。
3.二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
4.高圧大容量の水管ボイラーには、全吸収熱量のうち、蒸発部の接触伝熱面で吸収される熱量の割合が大きい放射形ボイラーが用いられる。
5.貫流ボイラーは、管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適している。

回答

正解は(4)

1.水管ボイラーは、ボイラー水の流動方式によって自然循環式、強制循環式及び貫流式に分類される。
→正しい
実際にこの3種類に分類されます。

  • 自然循環式:ボイラー水の密度差を利用して自然に循環させる方式
  • 強制循環式:ポンプを使って強制的にボイラー水を循環させる方式
  • 貫流式:ポンプを使って水管へ押し込まれた水が加熱されて蒸気になる方式

2.強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせる。
→正しい
高圧になると蒸気と水との密度差が小さくなるため、自然の循環力ではボイラー内の水が循環しにくくなります。
そのため、高圧のボイラーではポンプを使って強制的にボイラー水の循環を行わせます。

3.二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
→正しい
水管ボイラーはドラムの数によって、単胴型、二胴型、三胴型に分類されます。
二胴型は以下の画像のように上下にドラムを二つもち、それぞれのドラムを連絡する管と、燃焼室の壁面に水管を配した水冷壁によって構成されています。

水管ボイラー
出典;岩谷産業

4.高圧大容量の水管ボイラーには、全吸収熱量のうち、蒸発部の接触伝熱面で吸収される熱量の割合が大きい放射形ボイラーが用いられる。
→不適当
放射形ボイラーとは、炉壁全面を水管で覆った水冷壁によって構成し、この水冷壁の中を通過した水を放射伝熱(火炉からの熱)によって加熱して蒸気にします。そのため、接触伝熱面(燃焼室を出た後の熱、高温ガスなど)はかなり少なくなっています。
このような構造のため、水ドラムは不要で蒸気ドラムだけで構成されています。
したがって、「高圧大容量の水管ボイラーには、全吸収熱量のうち、蒸発部の接触伝熱面で吸収される熱量の割合が小さい放射形ボイラーが用いられる。」が正しい記述です。

出典:産業技術史資料情報センター
  • 放射伝熱面:炉筒のような燃焼室に直面している火炎などから強い放射熱を受ける部分
  • 対流伝熱面(接触伝熱面):煙管のように燃焼室を出た後の、高温のガスが通る部分

水冷壁:ボイラーの燃焼室の壁を構成する、水管が並んだパネル状の部品です。この水冷壁は、高温の燃焼ガスからの熱を吸収して水を蒸気に変える伝熱面としての役割を持ちつつ、炉壁の温度上昇を防いでボイラーの焼損を防止します。

5.貫流ボイラーは、管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適している。
→正しい
貫流ボイラーは、水が管内を一方向で流れながら加熱され、そのまま蒸気になる構造です。
水または蒸気が流れるのは水管の中だけで、ドラム(水や蒸気を一時的に貯める容器)が不要となっています。
このような構造から、水管の強度を高めるだけで高圧に耐えられるようになるため高圧ボイラーに適しています。
一方、ドラムを有するボイラー(丸ボイラーなど)は、ドラムの強度上げないと高圧化が難しくなっています。

貫流ボイラー
出典:仙台市ガス局
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