2級ボイラー技士 2023年(R5)10月-問1 過去問の解説【ボイラーの構造に関する知識】 

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問題

熱及び蒸気について、適切でないものは次のうちどれか。

1.水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。
2.過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度という。
3.飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど小さくなる。
4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど小さくなる。
5.飽和水の蒸発熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。

回答

正解は(3)

1.水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。
→ 正しい
圧力が一定であれば、沸騰中に加えた熱はすべて液体を蒸気に変えるために使われるため、水の温度は変わらず一定です。
このときに加える熱のことを潜熱(蒸発熱)といいます。

潜熱については、令和4年4月問1で詳しく解説しています。

2.過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度という。
→ 正しい
沸騰した後にさらに熱を加えて蒸気の温度を上げると、過熱蒸気になります。過熱蒸気の温度と、同じ圧力の飽和蒸気の温度との差を過熱度と呼びます。(過熱度は以下の図を参照)

ヘタ・レイ

例えば、標準大気圧の状態では水は 100℃ で沸騰し(飽和温度)、この蒸気をさらに加熱して温度が 120℃になったとします。
このとき、過熱度は以下の計算で求められます。
過熱度=120℃(過熱蒸気の温度)−100℃(飽和温度)=20℃
圧力が変われば飽和温度も変わるという点に注意しておいてください。

3.飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど小さくなる。
→ 不適当
圧力が高くなるほど飽和水の比エンタルピは大きくなります。

水は圧力が変わると、沸騰する温度(飽和温度)が変わります。

  • 圧力が高くなる → 沸騰する温度も高くなる
  • 圧力が低くなる → 沸騰する温度も低くなる

比エンタルピは、水1kgあたりが持つ熱量を表します。
飽和水の場合、まだ蒸気にはなっていないので、この熱量は温度を上げるための顕熱だけです。

圧力が高くなると沸騰温度も上がるため、沸騰するまでに必要な熱量(顕熱)が大きくなります。
そのため、圧力が高くなるほど飽和水の比エンタルピは大きくなるのです。

以下のように圧力が上昇すると沸騰する温度も上昇していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)

圧力(MPa)沸騰温度(℃)
0.0145
0.0260
0.0581
0.1(大気圧)100
0.2120

4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど小さくなる。
→ 正しい
飽和蒸気の比体積(1 kgあたりの体積)は、圧力が高くなるほど小さくなります
理由は簡単で、圧力が高くなると蒸気の分子がぎゅっと押し合うようになり、蒸気自体が密になって体積が小さくなるからです。
圧力が上がると蒸気は密になり(分子が詰まる)、体積が小さくなるためです。

イメージとしては、1 kg の蒸気を小さな粒の集まりだと考えてください。

  • 圧力が低いと粒は広がって自由に動ける → 蒸気の体積は大きい
  • 圧力が高くなると粒同士が押し合いながら詰まる → 蒸気の体積は小さい

5.飽和水の蒸発熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。
→ 正しい
蒸発熱(潜熱)は、水が液体から気体に変わるときに必要な熱のことで、圧力が高くなると、水が蒸気になるのに必要な熱量は少しずつ減っていきます
これは、圧力が高くなると液体と蒸気の状態の違いが小さくなるためです。やがて、臨界圧力に達すると、液体と蒸気の区別がなくなり、状態変化に必要な蒸発熱(潜熱)ゼロになります。

以下のように圧力が上昇すると潜熱は減少していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)

圧力(MPa)沸騰温度(℃)蒸発潜熱(kJ/kg)
0.1(大気圧)100約2,257
22.06(臨界圧力)約3740

臨界圧力とは、物質の臨界温度において気体と液体が区別できなくなる「臨界点」での圧力のことです。

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