2級ボイラー技士 2022年(R4)4月-問5 過去問の解説 【ボイラーの構造に関する知識】

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問題

鋳鉄製ボイラーについて、誤っているものは次のうちどれか。

1.暖房用蒸気ボイラーでは、原則として復水を循環使用する。
2.暖房用蒸気ボイラーでは、給水管はボイラー本体の安全低水面の位置に直接取り付ける。
3.暖房用蒸気ボイラーの返り管の取付けには、ハートフォード式連結法が用いられる。
4.ウェットボトム式は、ボイラー底部にも水を循環させる構造となっている。
5.鋼製ボイラーに比べ、強度は低いが、腐食には強い。

回答

正解は(2)

問題の解説の前に鋳鉄製ボイラーの説明をします。

鋳鉄製ボイラーは、鋳鉄製のセクションをニップル(結合用の部品)で連結して組み立てるボイラーです。主に暖房用蒸気ボイラーや温水ボイラーとして使われています。

鋳鉄製ボイラー
出典:モノタロウ

鋳鉄製ボイラーには以下のような特徴があります。

  • セクションの数を調整することで、伝熱面積を増減させることができる。
  • 上記の構造により、分解した状態で運搬や搬入が可能なため、据付が容易である。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて強度が低いため、高圧では使用できず、低圧用途に向く。
  • 蒸気ボイラーで圧力0.1MPa以下、温水ボイラーで圧力0.5MPa以下かつ温度120度以下
  • 異なるセクション同士で熱の伝わりに変化が起きる事があるため、急激な加熱を行うとそれぞれのセクションで不動膨張が発生して割れが生じる場合がある。
  • 鋳鉄は鋼材に比べて耐食性に優れており、腐食しにくい。

1. 暖房用蒸気ボイラーでは、原則として復水を循環使用する。
→正しい
暖房用ボイラーでは、原則として水をボイラー内で循環させて使用します。
その理由は、水が蒸気となって暖房のために熱を放出した後も、まだ熱を十分に蓄えているためです。この熱をそのまま捨ててしまうのはもったいないので、復水(蒸気が冷えて凝縮したもの)をボイラーに戻して再利用するのが一般的です。
また、復水は不純物が少ないため、ボイラー内部の腐食やスケール(水垢)の付着を防ぐこともできます。

2. 暖房用蒸気ボイラーでは、給水管はボイラー本体の安全低水面の位置に直接取り付ける。
→不適当
暖房用鋳鉄製蒸気ボイラーでは、原則として水をボイラー内で循環させて使用します。しかし、ブローなどでボイラー内の水量は減少するため、給水が必要になります。
給水される水は温度が低いため、高温のボイラー本体に直接注ぐと、各セクションで不均一な膨張(不動膨張)が発生し、ひび割れの原因となります。
そのため、給水管は「安全低水面の位置に直接」ではなく、ボイラー水が戻ってくる返り管に取り付けて、戻ってきた水(復水)と混合させて温めて給水するのが一般的です。

ヘタ・レイ

返り管には、選択肢1で説明した復水が流れています。

ボイラーのブローとは、ボイラー水に含まれる不純物が濃縮されるのを防ぐため、ボイラー水の一部を外部に排出する操作のことです。不純物が濃縮するとボイラーの性能が低下したり、故障の原因になったりするため、定期的なブローが不可欠です。

3. 暖房用蒸気ボイラーの返り管の取付けには、ハートフォード式連結法が用いられる。
→正しい
暖房用蒸気ボイラーの復水返り管で漏洩が起きると、ボイラー内の水位が低下する事故が発生します。
そこで、下図のように返り管をボイラーの安全低水面よりも上に立ち上げてから接続する方法があります。こうすることで、返り管で漏洩が起きても、水位が安全低水面を下回ることはありません。
この接続方法をハートフォード式連結法といいます。

ハートフォード式連法

4. ウェットボトム式は、ボイラー底部にも水を循環させる構造となっている。
→正しい
ウェットボトム式は、ボイラーの底部にも水が循環する構造で、底部に循環させないドライボトム式と比べて伝熱面積が増加します。

5. 鋼製ボイラーに比べ、強度は低いが、腐食には強い。
→正しい
鋳鉄は鋼に比べて腐食には強く耐久性も高いですが、強度は劣りますので低圧での使用に適しています。

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