問題
ボイラーの水循環について、誤っているものは次のうちどれか。
| 1. | ボイラー内で、温度が上昇した水及び気泡を含んだ水は上昇し、その後に温度の低い水が下降して水の循環流ができる。 | ||
| 2. | 丸ボイラーは、伝熱面の多くがボイラー水中に設けられ、水の対流が容易なので、水循環の系路を構成する必要がない。 | ||
| 3. | 水管ボイラーは、水循環を良くするため、水と気泡の混合体が上昇する管と、水が下降する管を区別して設けているものが多い。 | ||
| 4. | 自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど蒸気と水との密度差が小さくなり、循環力が弱くなる。 | ||
| 5. | 水循環が良すぎると、熱が水に十分に伝わるので、伝熱面温度は水温より著しく高い温度となる。 |
回答
正解は(5)
1.ボイラー内で、温度が上昇した水及び気泡を含んだ水は上昇し、その後に温度の低い水が下降して水の循環流ができる。
→ 正しい
ボイラー内の水は、まず加熱されることで温度が上がります。すると密度が下がり、軽くなるため浮力によって上昇します。上昇した水は次第に冷えて温度が下がり、密度が大きくなって重くなります。すると今度は下降し、この「温度変化による密度差」の繰り返しによって自然対流が生じ、水の循環流が形成されます。
例えば 温泉や入浴中の浴槽 をイメージするとわかりやすいです。お湯が湯口から供給されると、熱いお湯は軽いため上層に広がり、下の方は比較的冷たいままです。この上下の温度差によって水がゆっくり動き、全体が均一に温まっていきます。
- 温度が低い → 密度が大きい(重い) → 下に沈む
- 温度が高い → 密度が小さい(軽い) → 上に上がる
ヘタ・レイ物質は基本的に温度が上昇すると密度が小さくなり、温度が下降すると密度が大きくなります。
ただし、水の場合はちょっと特殊で、4℃付近で密度が最大になるという「異常膨張」の性質があります。これは氷が水に浮く理由でもありますね。
2.丸ボイラーは、伝熱面の多くがボイラー水中に設けられ、水の対流が容易なので、水循環の系路を構成する必要がない。
→ 正しい
丸ボイラー(炉筒ボイラーや炉筒煙管ボイラーなど)は、大きな円筒形の胴(ドラム)の中に大量のボイラー水が入っており、その水の中に燃焼ガスが通る炉筒や煙管といった伝熱面が配置されています。
この構造では、伝熱面で加熱された水は密度が小さくなって上昇し、冷やされた水は密度が大きくなって下降するという、広い水空間での自然対流(自然循環)が起こりやすくなっており、特別なポンプなどによる水循環の経路(強制循環)を構成する必要はありません。



下図は丸ボイラーのイメージです。ボイラー本体が水で満たされており、燃焼室や煙管を流れる高温の燃焼ガスから熱を受けて水が温められ、やがて蒸気が発生します。
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出典:厚生労働省
以下の表は、ボイラーの分類です。材質や構造によって様々なボイラーが存在します。
| 鋼製ボイラー | 丸ボイラー | 立てボイラー | |
| 炉筒ボイラー | |||
| 煙管ボイラー | |||
| 炉筒煙管ボイラー | |||
| 水管ボイラー | 自然循環式水管ボイラー | ||
| 強制循環式水管ボイラー | |||
| 貫流ボイラー | |||
| 鋳鉄製ボイラー | 鋳鉄製ボイラー(セクショナルボイラー) | ||
3.水管ボイラーは、水循環を良くするため、水と気泡の混合体が上昇する管と、水が下降する管を区別して設けているものが多い。
→ 正しい
水管ボイラーは、効率よく水を循環させるために、管の役割を分けています。燃焼ガスの熱で温められた水や気泡を含む混合体は密度が小さくなり、自然に上昇するため「上昇管」と呼ばれる管を通ります。逆に、温度が下がって密度が大きくなった水は「下降管」と呼ばれる管を通って下に戻ります。
- 温度が低い → 密度が大きい(重い) → 下に沈む
- 温度が高い → 密度が小さい(軽い) → 上に上がる
このように、上昇管と下降管をはっきり区別して設けることで、ボイラー内部に自然な循環流(自然対流)が形成され、効率よく蒸気を発生させることができます。



下図は水管ボイラーのイメージです。先ほどの丸ボイラーと違い、水は水管やドラムの中にしかないため、丸ボイラーと比べると保有水量は少なくなります。
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出典:モノタロウ
4.自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど蒸気と水との密度差が小さくなり、循環力が弱くなる。
→ 正しい
自然循環式の水管ボイラーでは、加熱によってできた「水+蒸気の混合体」が上昇管を上がり、冷えた水が下降管を下がることで、水の循環が生まれています。
この循環を動かす原動力は「蒸気と水の密度差」です。
- 圧力が低いとき:
蒸気の密度は水に比べて非常に小さく(=とても軽い)、密度差が大きいため、循環が活発に起こります。 - 圧力が高いとき:
蒸気の密度が水に近づいていく(=蒸気が重くなる)ため、密度差が小さくなり、浮力が弱くなります。その結果、循環力も弱くなります。
極端な例として、臨界圧力(約22.1MPa)では水と蒸気の性質が区別できなくなり、密度差もゼロになるため、自然循環は成り立たなくなります。



この現象を解消するために、強制的にボイラーの水を循環させる強制循環式水管ボイラーがあります。
5.水循環が良すぎると、熱が水に十分に伝わるので、伝熱面温度は水温より著しく高い温度となる。
→ 不適当
水循環が良いほど、熱は効率よく水に奪われるため、伝熱面温度は水温近くに保たれます。伝熱面が著しく高温になるのは、水循環が滞る(循環不良)ことで熱が奪われなくなったときです。

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