2級ボイラー技士 2022年(R4)10月-問1 過去問の解説【ボイラーの構造に関する知識】

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問題

熱及び蒸気について、誤っているものは次のうちどれか。

1.水、蒸気などの1kg当たりの全熱量を比エンタルピという。
2.水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。
3.飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど大きくなる。
4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど大きくなる。
5.飽和水の潜熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。

回答

正解は(4)

比エンタルピ、顕熱、潜熱については、令和4年4月問1で詳しく解説しています。

1.水、蒸気などの1kg当たりの全熱量を比エンタルピという。
→正しい
比エンタルピは、物質1kgあたりの全熱量(潜熱+顕熱)を表し、単位はkJ/kgです。

2.水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。
→正しい
圧力が一定の条件では、沸騰中に加えた熱は状態変化に使われ、温度は変わらず一定になります。

3.飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど大きくなる。
→正しい
水は圧力が変わると、沸騰する温度(飽和温度)が変わります。

  • 圧力が高くなる → 沸騰する温度も高くなる
  • 圧力が低くなる → 沸騰する温度も低くなる

比エンタルピは、水1kgあたりが持つ熱量を表します。
飽和水の場合、まだ蒸気にはなっていないので、この熱量は温度を上げるための顕熱だけです。

圧力が高くなると沸騰温度も上がるため、沸騰するまでに必要な熱量(顕熱)が大きくなります。
そのため、圧力が高くなるほど飽和水の比エンタルピは大きくなるのです。

以下のように圧力が上昇すると沸騰する温度も上昇していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)

圧力(MPa)沸騰温度(℃)
0.0145
0.0260
0.0581
0.1(大気圧)100
0.2120
ヘタ・レイ

ボイラーはまさにこの性質を利用して、圧力を上げることで、より高温の蒸気を作れるようにしています。

MPa(メガパスカル) は、圧力の単位 Pa(パスカル) を 100万倍 したものです。
「M(メガ)」は「百万倍」という意味です。
一方、台風情報でよく聞く hPa(ヘクトパスカル) は、Pa を 100倍 したものです。
「h(ヘクト)」は「100倍」という意味になり、気圧(Pa)が低いほど強い台風になります。

4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど大きくなる。
→不適当
飽和蒸気の比体積(1 kgあたりの体積)は、圧力が高くなるほど小さくなります
理由は簡単で、圧力が高くなると蒸気の分子がぎゅっと押し合うようになり、蒸気自体が密になって体積が小さくなるからです。
圧力が上がると蒸気は密になり(分子が詰まる)、体積が小さくなるためです。

イメージとしては、1 kg の蒸気を小さな粒の集まりだと考えてください。

  • 圧力が低いと粒は広がって自由に動ける → 蒸気の体積は大きい
  • 圧力が高くなると粒同士が押し合いながら詰まる → 蒸気の体積は小さくなる

5.飽和水の潜熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。
→正しい
潜熱(蒸発熱)は、水が液体から気体に変わるときに必要な熱のことで、圧力が高くなると、水が蒸気になるのに必要な熱量は少しずつ減っていきます
これは、圧力が高くなると液体と蒸気の状態の違いが小さくなるためです。やがて、臨界圧力に達すると、液体と蒸気の区別がなくなり、状態変化に必要な潜熱はゼロになります。

以下のように圧力が上昇すると潜熱は減少していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)

圧力(MPa)沸騰温度(℃)蒸発潜熱(kJ/kg)
0.1(大気圧)100約2,257
22.06(臨界圧力)約3740

臨界圧力とは、物質の臨界温度において気体と液体が区別できなくなる「臨界点」での圧力のことです。

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