問題
熱及び蒸気について、誤っているものは次のうちどれか。
| 1. | 水、蒸気などの1kg当たりの全熱量を比エンタルピという。 | ||
| 2. | 水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。 | ||
| 3. | 飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど大きくなる。 | ||
| 4. | 飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど大きくなる。 | ||
| 5. | 飽和水の潜熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。 |
回答
正解は(4)
1.水、蒸気などの1kg当たりの全熱量を比エンタルピという。
→正しい
比エンタルピは、物質1kgあたりの全熱量(潜熱+顕熱)を表し、単位はkJ/kgです。
2.水の温度は、沸騰を開始してから全部の水が蒸気になるまで一定である。
→正しい
圧力が一定の条件では、沸騰中に加えた熱は状態変化に使われ、温度は変わらず一定になります。
3.飽和水の比エンタルピは、圧力が高くなるほど大きくなる。
→正しい
水は圧力が変わると、沸騰する温度(飽和温度)が変わります。
- 圧力が高くなる → 沸騰する温度も高くなる
- 圧力が低くなる → 沸騰する温度も低くなる
比エンタルピは、水1kgあたりが持つ熱量を表します。
飽和水の場合、まだ蒸気にはなっていないので、この熱量は温度を上げるための顕熱だけです。
圧力が高くなると沸騰温度も上がるため、沸騰するまでに必要な熱量(顕熱)が大きくなります。
そのため、圧力が高くなるほど飽和水の比エンタルピは大きくなるのです。
以下のように圧力が上昇すると沸騰する温度も上昇していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)
| 圧力(MPa) | 沸騰温度(℃) |
|---|---|
| 0.01 | 45 |
| 0.02 | 60 |
| 0.05 | 81 |
| 0.1(大気圧) | 100 |
| 0.2 | 120 |
ヘタ・レイボイラーはまさにこの性質を利用して、圧力を上げることで、より高温の蒸気を作れるようにしています。
4.飽和蒸気の比体積は、圧力が高くなるほど大きくなる。
→不適当
飽和蒸気の比体積(1 kgあたりの体積)は、圧力が高くなるほど小さくなります。
理由は簡単で、圧力が高くなると蒸気の分子がぎゅっと押し合うようになり、蒸気自体が密になって体積が小さくなるからです。
圧力が上がると蒸気は密になり(分子が詰まる)、体積が小さくなるためです。
イメージとしては、1 kg の蒸気を小さな粒の集まりだと考えてください。
- 圧力が低いと粒は広がって自由に動ける → 蒸気の体積は大きい
- 圧力が高くなると粒同士が押し合いながら詰まる → 蒸気の体積は小さくなる
5.飽和水の潜熱は、圧力が高くなるほど小さくなり、臨界圧力に達するとゼロになる。
→正しい
潜熱(蒸発熱)は、水が液体から気体に変わるときに必要な熱のことで、圧力が高くなると、水が蒸気になるのに必要な熱量は少しずつ減っていきます。
これは、圧力が高くなると液体と蒸気の状態の違いが小さくなるためです。やがて、臨界圧力に達すると、液体と蒸気の区別がなくなり、状態変化に必要な潜熱はゼロになります。
以下のように圧力が上昇すると潜熱は減少していきます。(表の中の数値は覚えてなくていいです。)
| 圧力(MPa) | 沸騰温度(℃) | 蒸発潜熱(kJ/kg) |
|---|---|---|
| 0.1(大気圧) | 100 | 約2,257 |
| 22.06(臨界圧力) | 約374 | 0 |

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